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キャリアコンサルティング

2018/08/15

【コラム】企業内キャリアコンサルティングの実例~40代女性Bさん(お客様相談室)の場合~

 今回は前回に引き続き、企業内キャリアコンサルティングを行った方の一例として、退職を防ぐことができた事例をご紹介します(守秘義務の範囲内で了解を得ています)。

 今回の相談者は、40代前半のBさん。シングルマザーで高校生のお子さんと中学生のお子さんがいらっしゃり、Bさんのご両親と一緒に実家に住んでいました。

 ある日、そのBさんが、「他社の内定をもらったので今の会社を辞めたい・・・・」と、キャリアコンサルタントである私のもとにやってきました。

 当時Bさんは、お客様相談室で商品を購入していただいたお客様から商品の不具合や使い方について対応する部署に7年間勤めていました。Bさんはいつも“笑声”で、どのようなお客様にも丁寧に対応し、時にはお客様からお礼や感謝の手紙をいただいたり、品物まで送ってくださったりするお客様もいらっしゃるほど、優秀な相談員でした。コールセンター業務が長く、「電話を通してでもお客様の役に立つことにやりがいを感じている」と話していました。また、会社としても家庭の事情を考慮し、子どもの学校行事がある場合やご両親の体調不良などによる突然のお休みや遅刻、早退に関しては、できる限りサポートしていました。

 そのようなBさんに対し私はまず、退職したい理由を尋ねた所、下記のような話が出てきました。

・給与に不満がある。
・仕事内容に飽きてしまった。
・このままこの仕事を続けていくのが不安である。

 確かにBさんは、給与の上がり具合は決して良いとは言えませんでした。また、お客様からの問合せ対応に関しては、大きなクレームなどが発生することはほぼなかったため、日々の業務が単調であったことが想像できます。次に仕事に対する不安について尋ねた所、「パソコンスキルが低いので事務職の仕事を避けてきたが、このまま電話業務を続けていては何もスキルが上がらない」と不安を感じていました。

 その点、内定先では給与が上がり、業務内容は一般事務で、パソコンスキルも業務を通して学ぶことができそうでした。また、若手社員のリーダー的存在を期待されていることも、彼女は魅力を感じたようでした。

 ここまで具体的に転職先との話が進んでいたのですが、伏し目がちに話すBさんの様子が気になりました。そこで、「自分で話をしてみて、今はどういう気持ちになりましたか?」と尋ねた所、「実は迷っている・・・・」とのことでした。

 確かに給与は上がり、希望していた職種で期待もされているようでしたが、実際に現職を辞めるとなると、下記のことが不安だというのです。

・転職先での人間関係
・新しい会社で、しかも今まで経験していない仕事に就くということ
・家庭の事情を考慮してくれるのか。また、周囲がそれを理解して協力してくれる
    のか。

 今の職場環境はチームワークが良く、また、自分の家庭の事情を同僚達によく理解してもらっているので、自分の仕事に協力していただいているそうです。そのような環境を転職先でもつくることができるのか、ということが不安とのでした。

 最後に、Bさんに仕事のやりがいを聞いてみました。Bさんはしばらく考え込んだあとに、「人に喜んでもらって誰かの役に立っていると実感できること」と答えました。現職にもやりがいを感じていたようですが、以前よりは高くないということでした。

 内定受諾はまだとのことでしたので、私はまずBさんに「その受諾の返事を待ってほしい。また、Bさんの今の思いを上層部に伝えても良いか」を確認し、その了解を得ました。

 面談後、私はBさんの上司と上層部に対し、「Bさんほどの方を手放すのは会社として大きな損失になるのではないか」ということを伝えました。そして協議を重ね、Bさんを営業部へ異動させることを提案してみました。営業事務の手が足りていなかったので募集をかけようか検討していた所だったのです。また、部署を異動するだけでなく、Bさんが抜けた後に入社するお客様相談室の新しい社員の指導員も兼任してもらうよう提案しました。商品知識が豊富で人当たりがいいBさんに、営業事務と指導員という役割は打ってつけだと思ったからです。上層部は指導員としての期待値を込めて、次期からはBさんに役職を付け、給与も上がることになりました。その内容をBさんに伝えた所、Bさんはとても喜び、会社に残ることを決心してくれました。

 Bさんは部署異動後、部署内の社員にパソコン操作を教えてもらいながら、自分でも勉強するようになり、今度は「経理知識も学びたい」と、簿記の勉強を始めました。また、新しく入社したお客様相談室の相談員に指導する傍ら、若手社員から詳しい商品知識を聞かれ、それを教えることでリーダーシップを発揮するようにもなりました。このように、人に喜んでもらえて自分が社員の役に立っていることに新しいやりがいを感じたそうです。

 今回は、企業内キャリアコンサルティングを通し、「辞めたい」という社員に対して、その理由を本人からしっかり傾聴し、本人の本当に悩んでいる問題を汲み取り、会社が迅速にできる限りの対応を検討した結果、退職を防ぐことができました。それだけではなく、部署を異動して新しい業務に就いたことで前向きに勉強を始め、また、指導員という新しい役割を与えたことでリーダーシップを発揮し、自己効力感が高まったようでした。

 企業内キャリアコンサルティングは、離職を防ぐ防波堤の役目を担うことがあります。また、場合によっては、相談者の了解を取った上で、組織に介入し対応策を提案することもあるということもあり、そのことを改めて実感した一件でもありました。

(文:エムキャリ・コラム編集部)

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